※「問題の拍手」については,こちら
ついに,ついに,「生ノリントン」を体験しました!
本日(01.11.08)アクロス福岡で,サー・ロジャー・ノリントン(Sir Roger Norrington)+シュツットガルト放送交響楽団(SWR)の初来日公演が行われました。S席が1,3000円と,来福するオーケストラとしては高額だったせいか,空席が目立ちましたが,会場は沸きに沸き,大成功だったと思います。
以下,ささやかなレポートをいたしますので,お読みくださいませ。
仕事を切り上げて(課長すみません)向かったものの,到着が15分前になってしまい,ばたばたと席に着きました。YAMAHAの店員さんとおぼしき人たちが,HansselerのCD(+元首席・チェリのCD)を販売していましたが,ほとんど立ち寄る人もなく,寂しい限り。博多は,HMVにもVirginにもclassicalのろくなCDがない土地柄で,ノリントンよりもSWRが目当てなのかなぁ,と不安がよぎります(汗)
SWRの面々がステージに登場します。パラパラと拍手が沸きましたが,驚いたことに,みなさん客席に向かって立ったままだったのです。コンマスを迎える頃には大きな拍手となりました。サー・ロジャー登場にあたって盛大な拍手となったことは,言うまでもありません。
意外にゆったりとした出だしでした。管楽器の音も押さえ気味で,モダン演奏に近づいた感じなのでしょうか。ただ,フレージングは個性的で,なおかつアーノンクールのようにエキセントリックでもガーディナーのように冷たくもない。例によって,暖かいノンビブラートの弦の響き。ああ,来て良かったと,早くも涙が出そうになる(爆)
弦のアンサンブルが少し乱れた感じもしましたが,いっときも熱の冷めることのない演奏で,あっと言う間に終わりました。周囲の人たちも,けっこうのっていた様子!
この曲の「ダダーッ」という出だしも,それほど鋭くなく,やわらかいものでした。しかし,雄弁なティンパニは相変わらずで,主部にはいると,例の快速テンポ(!)ああ,やっぱり,来て良かった!
第1楽章が終わると「事件」が起きました。別にノリントンが「ご自由に」と断ったわけでもないのに,拍手が沸いたのです!隣にいた人は,「この田舎ものめ」とでもいいたげに,ギロっと睨みます・・・私も,拍手をしていました(爆)
#この拍手,結局,メインの第2,第3楽章まで続きました。休憩に入るときに,「『慣例』につき,楽章の間の拍手はご遠慮ください」と場内アナウンスが入ってしまって,最後では「ギロ」どころか,ぶつくさ言われてしまいましたが,私はおかまいなし。やばかったでしょうか・・・確かに,ロンドンじゃなくて福岡ですものね。でも,私は,「体験シリーズ」が来たつもりで,拍手したんですよぉ・・・
第2楽章の最初のヴァイオリンの音色,古楽,とくにノリントン以外には考えられない美しさです。本当に,彼が指揮すると弦の響きが何と柔らかくなるのでしょう! 多分,ガット弦だったと思いますが,自然な倍音は,聴く人の心の琴線に触れるのですね。またまた,涙が出そうになる(自爆)
#と,最初はこう書いたのですが,その後,神崎さんからのメールで,スチール弦の可能性が大である,との情報をいただきました。だとしたら,もう,ホントにすごい!!! 完全モダン仕様の楽器でこんな響きが出せた演奏,今まであったんですかぁ!!!
言うこと無しの第3楽章の後,猪木のダダーもふっとぶ(謎)第4楽章は,もう最高でした。ホールの残響が多いせいなのか,ドイツのオケで反応が遅いせいなのか,ここでのリズムの刻みも,よく言われる「ノリントン臭」の少ない穏当なもの。しかし,会場の人たちは,かなり驚いた様子でした。
弦のプルトを,おそらく2つずつ増やして,メインが演奏されました。木管楽器にはひとりずつアシがついています。おかげで,「よくできた女性の足」のような(アシづくし−おやぢ)ふわっとしたフレージングが,くっきりと分かります。
#この特徴は,パンフレットの解説(神崎正英さん)にもある通り,第4楽章の第1主題で弦楽器で十分に味わうことができます。
ベト2でもそうでしたが,今回の演奏では,主題提示部の繰り返しは,いっさいありませんでした。このあたりは,ノリントンの融通無碍なところですね。
第1楽章のコーダにはいる前の,しゃくりあげるようなリズムは,例によってクレッシェンドをかけていて,彼のブラ1の最も好きな箇所の一つなんですが,彼の,体全体を使った指揮振りとマッチしていて,こっちの腰も浮き上がりそうになります。
モダンオケのコンマスは,弓をはねるように引くので「おい,パガニーニかよ」と言いたくなりますが,SWRのコンマスが,弓を弦にしっかりとつけ,かつ軽やかに引いています。第2楽章のソロでさえも,ビブラートは押さえ気味。その辺が,意思統一されていて,絵も言えぬ味わいがでてきます(でも,ときどき地金が出るのか,奏者のうち2,3人が,ついつい軽くビブラートをかけているような気もしました。勘違いかもしれませんが)
今回の最大の聴きものは,このブラ1の第4楽章でした。重々しい序奏,尾根道を逍遙しているかのような移行部(というのかな,ホルンの主題で有名な),さきほども述べた,人に優しい・自然に優しい,暖かな主題提示部,緊迫感あふれた展開部と,盛りだくさんな音楽なのですが,もったいぶったパウゼなぞない,シームレスな運びで,少なくとも「MSNエクスプローラ」よりも優れていると思われます(大謎)まさに,風のように駆け抜けてゆく爽やかなブラームス!!!
コーダのティンパニの叩き方の面白いこと(!)それに誘導されるかのように,弦がズワンと膨らむようなフレージングを続けます。これが,バロック以来ヨーロッパのオーケストラが続けていた(そして一時期途絶えてしまった)演奏スタイルなのですねぇ,多分。オランダ古楽の人たちは,室内楽の世界で見せてくれていますが,ベートーヴェンやブラームスで示してくれるのは,ノリントンくらいではないでしょうか?!!
といっても,CDではなかなか体感できるものではないですね。ノリントンですら,CDではかすかに感じる程度だったのですが,今回の演奏で,肌で感じることができました。
いわゆる「オーセンティック」な演奏というのは,古雅な木管の響きや,鋭いアタック,快足テンポなどだけでなく,肌のぬくもりのあるフレージングでもある,ということを,私のかさかさ鮫肌にも感じさせてくれた,ノリントンの初日公演なのでした!
アンコールは,シューベルト「ロザムンデ」の第2バレエ。やけに短く終わったなぁと思ったら,拍手の後,トリオから後を続けて演奏・・・もう,お茶目なんだからぁ。でも,ウケはいまいちだったかなぁ。聴衆は「きょとん」としていた感じです(笑)
公演後,楽屋に押し掛けました。関係者の方(?)が楽屋のドアを開けたら,なんと,サー・ロジャーが上半身ヌードでご登場(苦笑)いいのかなぁと外で控えていましたが,お招きに預かり,サインを頂いてきました。握手は2回もしてもらっちゃった!いーでしょ!!
また,来年も来てください,サー・ロジャー!!!
ご感想はこちらまで
神崎正英さんのサイトで,他の公演の模様が紹介されています。